せどりを続けていると、仕入れ以外にも細かい支出が増えていきます。梱包資材、スマホ代、自宅の電気代、撮影用の機材。これらをどこまで経費として扱えるのかは、はっきりした線引きが見えにくい部分です。この記事では、必要経費の基本的な考え方と、自宅で作業している場合の按分、そして10万円という金額のラインを、国税庁の公開情報をもとに整理します。
必要経費になるのは、その年の売上に対応する売上原価と、その年に生じた業務上の費用です。自宅で作業している場合の家賃や光熱費のように、家事と業務の両方にかかわる支出(家事関連費)は、国税庁の説明では「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額」に限って必要経費になるとされています。つまり按分そのものは否定されていませんが、根拠が示せることが前提です。また、10万円以上のものは原則としてその年に全額を経費にできず、減価償却の対象になります。何をどこまで経費にできるかは個々の状況で変わるため、迷う支出が出てきたら税務署または税理士に確認してください。
- 必要経費の基本的な考え方
- せどりで発生する仕入れ以外の費用
- 自宅で作業している場合の家事関連費と按分
- 10万円・20万円という金額のライン
- 必要経費にならないものの例
- 経費を記録するときに揃えておくもの
必要経費の基本の考え方
経費になるかどうかが決まったあと、どの科目で記録するかはせどりの勘定科目で整理しています。
国税庁のNo.2210 必要経費の知識によると、必要経費に算入できる金額は次のものとされています。
- 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
- その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
また同ページでは、必要経費となる金額はその年において債務の確定した金額であるとされ、その年に支払っていても債務が確定していないものはその年の必要経費にならず、逆に支払っていなくても債務が確定していればその年の必要経費になる、と説明されています。
1つ目の「売上原価」は仕入れの話です。仕入れた分がそのまま経費になるのではなく、その年に売れた分が対応します。年末に売れ残っている在庫の扱いはせどりの棚卸のやり方で扱っています。この記事で見ていくのは、2つ目の「業務上の費用」のほうです。
せどりで発生する仕入れ以外の費用
せどりで実際に出ていく支出を並べると、次のようなものがあります。
- 販売にかかる手数料:販売手数料、配送代行手数料、在庫保管手数料
- 送料:倉庫への納品送料、自己発送の送料、返送費用
- 梱包資材費:段ボール、緩衝材、テープ、袋。要件はせどりの梱包のやり方で扱っています
- 仕入れの移動費:店舗仕入れの交通費、ガソリン代
- 通信費:スマホ代、自宅のインターネット回線
- 消耗品費:ラベルシール、プリンターのインク、文房具
- ツールやサービスの利用料:リサーチツール、会計ソフト
- 備品:パソコン、プリンター、撮影機材、保管用の棚
このうち、金額の計算そのものはせどりの利益計算のやり方で扱った費用と重なります。ここから先で問題になるのは、プライベートと共用しているものと、金額が大きいものの2つです。
自宅で作業している場合の家事関連費
せどりは自宅で作業することが多く、家賃・電気代・スマホ代は生活と事業の両方に使っています。この扱いについて、国税庁のNo.2210には次のように書かれています。
- 家事上の費用は必要経費にならない
- ただし個人の業務では、一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用があり、これを家事関連費という
- 例として店舗併用住宅に係る費用(租税公課、家賃、水道光熱費など)が挙げられている
- 家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られる
ポイントは最後の一文です。按分すること自体が否定されているわけではなく、「明らかに区分できる」ことが条件だと書かれています。逆にいえば、根拠を示せないまま感覚で割合を決めるのは、この条件から外れます。
「家賃の何割まで」「スマホ代の何割まで」という数字は、部屋の使い方や作業時間によって変わるため、一律の目安を書くことはできません。本記事では割合を提示しません。自分のケースでどう区分するかは、税務署の相談窓口か税理士に確認してください。判断に迷う項目が増えてきた場合の相談の目安は税理士に依頼するタイミングで整理しています。
按分で迷ったときに効くのは、割合を先に決めることではなく、記録を先に残すことです。作業に使っている部屋の広さ、作業した日と時間、仕入れで移動した日付と経路。こうした記録があると「明らかに区分できる」という条件に近づきます。何も記録していない状態から後付けで割合だけ決めるのが、いちばん説明しにくい形です。
10万円という金額のライン
パソコンや撮影機材のように金額が大きいものは、買った年に全額を経費にできるとは限りません。国税庁のNo.2100 減価償却のあらましによると、減価償却資産の取得に要した金額は、取得した時に全額必要経費になるのではなく、使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費としていくものとされています。
使用可能期間1年未満、または取得価額10万円未満
同ページの注記では、使用可能期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満のものは、その取得に要した金額の全額を業務の用に供した年分の必要経費とするとされています。せどりで買う消耗品や小物の多くはここに入ります。
取得価額10万円以上20万円未満
同じく注記によると、取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、一定の要件の下で、一括した取得価額の合計額の3分の1に相当する金額を、業務の用に供した年以後3年間の各年分において必要経費に算入することができるとされています。
金額の判定に消費税を含めるか
同ページには、取得価額の判定に際して消費税の額を含めるかどうかは納税者の経理方式によると書かれています。税込経理なら消費税を含んだ金額で、税抜経理なら含まない金額で判定し、免税事業者の経理方式は税込経理になるとされています。免税事業者かどうかの判断はせどりとインボイス制度で扱っています。
No.2100には、一定の要件を満たす青色申告者について、取得価額10万円以上30万円未満の減価償却資産を合計300万円まで必要経費に算入できる特例が案内されています。ただしこの特例には取得時期の要件があり、同ページでは「平成18年4月1日から令和8年3月31日までに取得した」ものが対象と記載されています(同ページは令和7年4月1日現在法令等)。期間が延長されているかどうかは変わり得るため、この特例を使う前に必ず国税庁の最新情報を確認してください。本記事では適用できると断定しません。
必要経費にならないものの例
No.2210には、必要経費にならないものの例も挙げられています。せどりで関係しやすいものを抜き出すと次のとおりです。
- 所得税や住民税は必要経費になりません
- 罰金、科料および過料などは必要経費になりません
- 生計を一にする配偶者その他の親族に支払う地代家賃などは必要経費になりません(受け取った人も所得として考えません)
- 生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給与賃金(青色事業専従者給与は除く)は必要経費になりません
- 固定資産税は業務用の部分に限って必要経費になります。一方で事業税は全額必要経費になります
- 業務用資産の購入のための借入金など、業務のための借入金の利息は必要経費になります
「家族に家賃を払って経費にする」といった形が成立しないのは、この規定によるものです。
経費を記録するときに揃えておくもの
経費の判断は、最後は記録が残っているかどうかに戻ってきます。最低限、次の3つを揃えておいてください。
- 金額が分かる資料:レシート、領収書、明細。保存の考え方はせどりの確定申告で扱っています
- 何のための支出かが分かる記録:日付、内容、相手先。レシートの余白に用途を書いておくだけでも後から追えます
- 家事関連費については区分の根拠:作業に使った面積、時間、移動の記録
これを手作業で維持するのが難しくなってきたら、記録の手段を見直すタイミングです。手書き・表計算ソフト・会計ソフトの違いはせどりの会計ソフトの選び方で整理しています。
AIは、支出の一覧を費目ごとに分類し直す、記録の抜けを探す、按分の根拠として何を残しておくべきかを整理する、といった下ごしらえに使えます。一方で、この支出が必要経費として認められるか、按分の割合を何割にするかといった税務上の判断をAIに決めさせるのは避けてください。AIはもっともらしく断定することがあります。最終確認は国税庁の情報、または税務署・税理士で行ってください。
よくある質問
Q. 自宅の家賃を経費にできますか?
国税庁のNo.2210では、家事上と業務上の両方にかかわりがある費用(家事関連費)のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額に限られるとされています。区分の根拠を示せるかどうかが問われる部分です。具体的な区分のしかたは税務署か税理士に確認してください。
Q. 仕入れに行った電車代やガソリン代は経費になりますか?
業務のために移動した分であれば、業務上の費用として整理されるものです。ただしプライベートの移動と混ざる場合は家事関連費と同じ考え方になり、区分できることが前提になります。日付・行き先・目的を記録しておくと、後から説明しやすくなります。
Q. 12万円のパソコンを買いました。今年の経費になりますか?
No.2100では、取得価額が10万円未満のものは全額をその年の必要経費とし、10万円以上20万円未満のものは一定の要件の下で3年間に分けて必要経費に算入できるとされています。10万円以上のものは原則として減価償却の対象になるため、買った年に全額を経費にできるとは限りません。金額の判定に消費税を含めるかは経理方式によります。
Q. 家族に手伝ってもらった分を給与として経費にできますか?
No.2210では、生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給与賃金は必要経費にならないとされています(青色事業専従者給与は除く)。青色事業専従者給与には別途の要件があるため、該当しそうな場合は税務署か税理士に確認してください。
Q. レシートをなくしてしまった支出はどうすればいいですか?
本記事では扱いを断定しません。金額が分かる資料が残っていない支出をどう扱うかは状況によって変わります。まずは同じことが起きないように、支出があった時点で記録を残す運用に切り替えるのが先です。判断に迷う場合は税務署の相談窓口か税理士に確認してください。
本記事に記載した必要経費の考え方・家事関連費の取扱い・減価償却の金額基準・必要経費にならないものの例は、本記事作成時点(2026年8月)に国税庁の公式ページで確認した内容です(No.2210およびNo.2100はいずれも令和7年4月1日現在法令等)。税制は改正されることがあり、また個々の支出をどう扱うかは状況によって変わります。実際の申告にあたっては、必ず国税庁の最新情報を確認するか、税務署の相談窓口または税理士に確認してください。
経費の線引きで迷ったときに戻る場所は2つです。1つは「業務上の費用かどうか」。もう1つは、家事と共用しているものについて「明らかに区分できるかどうか」です。国税庁は按分そのものを否定していませんが、区分できる根拠があることを条件にしています。だから割合を先に決めるより、記録を先に残すほうが結果的に早くなります。あわせて、10万円以上のものは買った年に全額を経費にできるとは限らない、という金額のラインも押さえておいてください。迷う支出が出てきたら、自分で決めつけずに税務署か税理士に確認するのが安全です。


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